インドという国には長らく憧れや尊敬の気持ちを持っていた。
そこは四大文明のひとつであるインダス文明揺籃の地。
日本人の精神文化の源流の一つである仏教の生まれ故郷。
ゼロの概念を生み出した人々。
マハトマ・ガンディーらが独立のために戦い抜いた歴史。
最近では世界最大の人口大国となり、今後の経済発展が期待されている。
人材の優秀さでも名高い。
久しぶりの海外旅行であるが、私は躊躇することなくインド行きを決めた。
40代から50代というのは、経験に裏付けられた判断力がピークに達する年代であると勝手に思っている。
体力的にはピークを過ぎているが、私は体力を落とさないように体を鍛えている。
そして情報社会である現代では、たやすく外国の情報が手に入る。
こうして2023年の秋、私はデリーのインディラ・ガンディー国際空港に降り立った。
インドの地でも地下足袋(足袋シューズ)はすこぶる快適である。
牛の糞を踏んでしまうのではないかと心配したが杞憂に終わった。デリーにいる牛の数は近年かなり減っているらしい。
デリーの街には想像を絶するカオスと喧騒があった。
人と牛と犬と猿が、同じ生き物として同じ平面に立っている。
人懐こい人々がひっきりなしに声をかけてくる。
大発展のさなかにある大国の首都はまた、深刻な大気汚染を抱えていた。
デリーから車で4時間の距離にあるアグラには、かの有名なタージ・マハルがその白亜の威容で人々を見下ろす。
インドの北東部にある宗教都市バラナシはガンジス川のほとりにあり、多くのヒンドゥー教徒たちの信仰を集める。
ガンジス川から昇る朝日はこの上なく美しい。
バラナシからほど近いサールナートという都市は、ブッダが悟りを開いたのちに最初に説法をした場所として名高い。
7世紀にかの有名な仏教僧である玄奘や義浄が当時の大唐帝国から訪れた場所でもあり、往時を偲ばせる遺跡群を見ていると感慨もひとしおである。
バラナシ市内にはヒンドゥー大学がある。
交雑したバラナシ市内にあってもさすがに大学構内は静かであり、半円形の広大な敷地内のごく一部を軽く6kmほど走ってきた。
現地人ガイド、市井の人々、物乞い、スピリチュアルな人々、詐欺師、牛、犬、山羊、猿。
インドの地で得た様々な出会いに感謝したいというと月並みではあるが、偽らざる私の気持ちである。
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