足裏が痛い。
右踵内側、足底腱膜の付着部だ。
第3足趾と第4足趾の付け根まで痛くなってきた。
このままではまずい。非常にまずい。
ランニングを休んでから2週間以上が過ぎ、確かに痛みは改善した。
NRS(Numerical raiting scale:痛みを数値で表す方法。痛みがなければ0点、最高に痛ければ10点。)でいえば10点が2点くらいにはなったが、以前と同じシューズと走り方でランニングを再開すればまた以前の痛みが再発することは火を見るより明らかだ。
私の人生からランニングという楽しみを奪われたくない。
シューフィッターという職業は、小説『陸王』を読んで知っていたが、ネットで調べると意外と身近にいるらしい。ネットで調べればあなたの町にもシューフィッターのいる靴屋さんが見つかるはずだ。
一度プロに足と靴の相談をしようと考えた私はシューフィッターのいる靴屋さんを訪ねた。
対応してくれた方は、正確にはシューフィッターではなくシューカウンセラーの資格を持っているとのことだったが、細かいことはよくわからないので本稿ではシューフィッターと表記させていただく。
簡単な自己紹介が済むと、シューフィッターさんは足型を取る器具を持ってきた。
これはなかなか優れもので、電気的な仕掛けではなく物理的な重さのみで圧の分布を表現してくれる。圧がかかる部分ほど濃い色で表現される。
私のフットプリントを見ると、明らかに踵側の色が濃いので後方重心であることがわかる。
ついで足長、足囲、足高を測ってもらった。
私の足は幅が狭く甲高なので、日本人の典型とは真逆とのことである。
これまで私は「履き心地の良い靴」というものに出会った記憶がない。足を覆ってくれればそれでよいと思っていた。
靴を履いて行うスポーツをしたことがないというのも、靴への無関心を助長したかもしれない(私がやってきたスポーツは相撲と水泳と柔道のみ)。
幅広で甲が低い足が日本人の典型なので、街で売られている靴も自然とそれに適したものとなる。ということは私が履いてきた靴は私の足に合っていなかった可能性がある。
それで納得がいった。
私が地下足袋を履いた時に感じた心地よさや解放感は、自分の足にとってきつ過ぎたり緩過ぎたりしない外履きに初めて出会ったことによるものであったのだ。
そしてシューフィッターさんがいくつかの靴を提案してくれた。
そのポイントは、まず内側縦アーチのサポートがしっかりしていること。そして靴底が長軸方向にカーブを描いていて足のロッカー機構(ロッキングチェアのように滑らかに前に転がる機能。記事の末尾に詳述する。)をサポートしてくれること。
そして選んだのがこの靴である。
4万円と非常に高価なのだが、背に腹は代えられない。治療費および将来への投資と考えて、思い切って購入を決めた。
きちんとヒールカップに踵を入れ、アッパーを丁寧に足の甲にかぶせて靴紐を適切な強さで締める。
これを履いて歩くと、確かにとても楽ちんである。
内側縦アーチが潰れないし、踵で着地すると自然と足が地面の上を転がってくれるので体が勝手に前に進むような感覚である。
ううむ、餅は餅屋というがシューフィッターさんの知識と技術に改めて脱帽である。
シューフィッターさんは「この靴で走られる方もおられますよ」というが、こんなに高価な靴をランニングに使うなんて、貧乏性の私にはとてもできない。
翌日、仲良くしてもらっている職場の理学療法士さんに靴屋さんでの顛末を説明した後で私の足を診てもらったのだが、甲高である上にやや開張足(横アーチが潰れている)気味であることを指摘された。何とも因果な足である。
高価な靴を買ったことを話すと彼は、アーチサポートのためにインソールの下に仕込むジェルパッドが百円ショップで売られていることを教えてくれた。
リハビリテーション室に実際に置いてあるパッドを、横アーチをサポートする形で私の靴のインソールの下に仕込んでもらった。
おお、これは具合がいい。足趾の末節骨の先端がしっかりと地面を噛んでいるのがわかる。
安い材料でアーチサポートの工夫をすれば、自分の足袋シューズをランニング用にカスタマイズできるのではないか。
そんなアイデアを思いつき、ほくほく顔で職場を後にする私であった。
※足のロッカー機構
rockという単語には「揺れ動く」という意味もある。ロックミュージックの由来も、この音楽を聴くと体が自然に揺れ動くことからきている。
足のロッカー機構には以下の4つがある。
①ヒールロッカー
踵骨の丸みを利用して足が転がる機構。
②アンクルロッカー
距骨が踵骨の上を転がる機構。
③フォアフットロッカー
中足骨遠位端の丸みを利用して足が転がる機構。
④トウロッカー
爪先の丸みを利用して足が転がる機構。横アーチが潰れると浮き指になりやすいので、この機構を使いづらくなる。
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