健康論第3回 ダイエットについて

woman eating breakfast 健康論
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まっとうな減量法

医者がダイエットについて書くとなると、何か魔法のように楽しくおいしく痩せられる方法や、あるいは痩せ薬についての話を期待されるかもしれない。

しかしご安心あれ。私はまっとうなダイエット法しか知らない。

BMI(Body Mass Index。(体重kg)÷(身長m)÷(身長m)で表す数字。22が標準的でも最も寿命が長いとされ、日本肥満学会の定義では25を超えると肥満となる)が30を超えるような病的な肥満の患者であれば薬物治療や外科手術(胃の部分切除術)の適応となることもあるが、リスクを考えればそこまでの状況に陥る前に自力で減量したいものである。

ダイエットという言葉は本来食事や食習慣を意味する英語だが、日本語では減量という意味で用いられることが多い。

ここで私が扱うテーマもずばり、体重を減らす方法である。

繰り返しお断りしておくが、おそらく誰もがどこかで聞いたような当たり前の方法しか私は知らない。

魔法のような方法は一つもない。1+1=2というくらいに当たり前の方法である。

大切なのはまず、何事においても王道はあるが近道(ズル)はないということを知ること。正しい知識を身につけることは何をする時にも重要なことだ。

そしてズルではない王道を、いかにストレスなく歩むかである。ズルはいずれ廃れるが、継続のためのコツというものはある。

私が実践し推奨するダイエット法は、いわゆる「マクロ栄養管理法」である。

最近ちまたでよく話題になっているし、私などよりもよほど上手に解説している人がたくさんいるからご存知の方も多いだろう。これは非常にシンプルで優れた方法である。

年齢、性別、身長、体重から1日の摂取カロリーを計算し、タンパク質・脂質・炭水化物の割合を計算し、食事メニューを組んで食べるだけ、というものである。これについては後述する。

そもそも体重がなぜ減るのか(あるいは増えるのか)を支配する原則はひとつしかない。

【原則】消費カロリーが摂取カロリーを上回れば痩せる。 

そして

【細則】基礎代謝量が大きければ消費カロリーは増える。 

つまり筋肉をつければ基礎代謝量は増える。

ダイエットの大敵についても若干触れておきたい。

ではひとつずつ見ていこう。

原則:消費カロリーが摂取カロリーを上回れば痩せる。

そんなことはわかっている、という声が聞こえてきそうだ。

皆さんの言いたいことはわかる。わかっているけど食べてしまう。

その通り。私もそうだ。

だがここで私が皆さんに伝えたいことは、何をどれくらい食べるとどれくらいのカロリーを摂取することになるかということ。そしてどういう運動をするとどれくらいのカロリーを消費するのかということである。

これらの知識があるだけで、体重管理が圧倒的にやりやすくなる。

まず摂取カロリーの方からいこう。ごく簡単な数字を覚えていただきたい。

タンパク質(protein)1gに含まれるカロリーは4kcal。

脂質(fat)1gに含まれるカロリーは9kcal。

炭水化物(carbohydrates)1gに含まれるカロリーは4kcal。

そして最近ではスーパーやコンビニで売っているほとんどの食品には、これらタンパク質、炭水化物、脂質の含有量と総カロリー数が記載されている。

さらに、カロリーSlismなどのウェブサイトを見ると各食材に含まれる栄養素を簡単に調べられる。

次は消費カロリーだ。

運動で消費するカロリーも実は簡単に計算できる。

消費カロリー(kcal)=身体活動量(METs×時間)×体重(kg)×1.05

METsとはMetabolic equivalentsの略であり、運動の強度を示す指標である。安静時を1とした時と比較して何倍のエネルギーを消費するかを示す。

厚生労働省のホームページに各エクササイズのMets数が記載されているので参照してほしい。

細則:基礎代謝量が大きければ消費カロリーは増える。

基礎代謝量とは、安静にした時に1日に消費するカロリーのことである。

日本医師会のホームページを参照して実際の数値を計算してみよう。

基礎代謝量(kcal/日)=基礎代謝基準値(kcal/kg/日)×参照体重(kg)

ホームページの表を参照にして、20代男性の基礎代謝量を計算すると、

基礎代謝量(kcal/日)=基礎代謝基準値(23.7kcal/kg/日)×参照体重(64.5kg)=1530kcal/日

ただし参照体重はあくまでも平均的な数値である。

ここで重要になってくるのは筋肉量である。

とある研究によると、除脂肪体重が1kg増えると、つまり筋肉量が1kg増えると、基礎代謝量が50kcal/日だけ増加するという(谷本ら、近畿大学2009)。

とうことは筋肉が増えるほど、基礎代謝量が増えるということである。

このことは直観的にも理解しやすいであろう。

ちなみにこの男性が頑張って筋トレを行い筋肉のみで体重を5kg増やしたとすると、基礎代謝量は

1530kcal/日+50kcal×5=1780kcal/day

にアップする。

この基礎代謝量を用いて、さらに1日に必要な推定カロリー数を計算できる。

1日に必要な推定カロリー(kcal/日)=基礎代謝量(kcal/日)×身体活動レベル

身体活動レベルについても先の医師会ホームページに記載されているが、大雑把に三段階に分けられている。

普通の会社員であればレベルⅡ程度のレベルであろうから、20代男性であれば身体活動レベルは1.75となる。

すると、20代会社員の1日に必要な推定カロリー数は

1,530kcal/日×1.75=2,677kcal/日

となる。

減量したければ、この数字より少ないカロリーを摂取すればよいのである。

減量の実例

さて、ではこの男性(体重64.5kg)がついつい誘惑に負けて1個400kcalのメロンパンを食べてしまったとしよう。通常の食事は普段通り、つまり2,677kcal摂取済みである。

明日の体重を増やさないためにこの400kcalを消費するには、どれだけの運動をする必要があるだろうか。

先の計算式を用いて計算しよう。

消費カロリー(kcal)=身体活動量(METs×時間)×体重(kg)×1.05

ジョギングであれば7METsの運動なので、

400kcal=7×時間×64.5×1.05

よって必要なジョギング時間は約0.84時間なので約50分となる。

これが速歩きだと3.8METsなので93分も歩かねばならない。

マクロ栄養管理法

マクロ栄養というのはタンパク質、脂質、炭水化物のことである。これら栄養成分の割合を計算することがマクロ栄養管理法の基本である。いくつか計算式があるようだが、代表的なものを紹介しよう。

1日の必要カロリー数は、前節で計算した「1日に必要な推定カロリー数」をもとにした各自の「1日に必要なカロリー数」である。減量、増量、維持という目的に応じて数字を調整する。

各栄養素の1日摂取量を求める計算式は以下の通りである。

・タンパク質(グラム):体重(kg)×2

 体重60㎏の人なら60×2=120gである。

・脂質(kcal):「1日に必要なカロリー数」×0.25

 グラムで表したければこの数字を9で割ればよい。

・炭水化物(kcal):「1日に必要なカロリー数」からタンパク質の分と脂質の分を引く。

 グラムで表したければこの数字を4で割ればよい。

こうして計算した数字をもとに、カロリーSlismなどのウェブサイトを見ながら1日にのメニューを組む。

そして食べる。

そして自分が目標とする体重に達するために必要と判断して組んだ運動メニューをこなす。

体重が減らなければ、カロリーを減らすか、運動強度を増やすかする。

厳密な計算は要らない。

これが、マクロ栄養管理法を用いた体重管理のやり方である。

ダイエットの大敵その1 睡眠不足

健康成人男性1,024名を対象に、睡眠時間と食欲に関するホルモンの関連を調べた報告によれば、睡眠時間が短くなると、レプチン(食欲抑制ホルモン)の分泌が低下して、グレリン(食欲増進ホルモン)の分泌が増えることが示されている。つまり、睡眠時間が短いと食欲に関するホルモンのバランスが乱れて食欲が増進してしまい、肥満につながりやすいと考えられる(Taheri S et al. Short sleep duration is associated with reduced leptin, elevated ghrelin, and increased body mass index. PLoS Med. 2004)。

これは経験的にも納得できる話だ。眠いのを我慢して夜遅くまで勉強していると、無性に食欲がわいてくるという経験は多くの人に覚えがあるだろう。

ダイエットの大敵その2 飲酒?

昔から「酒は百薬の長」と呼ばれており、少量の飲酒は心血管イベントのリスクを下げると言われていた。

ところが最近、飲酒には健康におけるメリットが一つもないという身も蓋もない研究(Lancet. 2018;391(10129):1513-1523.)が発表されてしまったことを知っている人も多いだろう。

では、飲酒は肥満につながるのかというと、これが意外と単純にそうとは言えないようだ。

「Alcohol Consumption and Obesity: An Update(Curr Obes Rep. 2015 Mar;4(1):122-30.)」は「アルコール摂取は、一部の個人において肥満の危険因子である可能性があると言うことは妥当である。」という控えめな表現に留めている。

一方、飲酒は空腹でもないのに食欲を増進させるという研究報告もある(Nature Communications. 2017; volume 8, Article number: 14014.)。

私もお酒を飲むと爆食いしてしまうタイプなので、この研究報告には大いに納得させられる。

もうひとつ、反省を込めていうと、お酒を飲んだ翌日よりも、数日間お酒を断った後の方が、圧倒的に体調はいい。

ついでに言うと、飲酒は睡眠の質を下げることがわかっている(Ebrahim IO, Shapiro CM, Williams AJ, Fenwick PB. Alcohol and sleep I: effects on normal sleep. Alcohol Clin Exp Res. 2013;37(4):539-49. Epub 20130124. doi: 10.1111/acer.12006. PubMed PMID: 23347102.)。

お酒の多様な魅力をいったん脇に置いておくと、健康への貢献ということに関して言えば、現在のところ飲酒肯定派は飲酒否定派に勝てそうもない。

継続のコツ

ダイエットに関する研究は大量に存在する。しかしすべての論文を読破しなければダイエットできない、などということがあるはずはない。

必要な知識は三大栄養素とそれぞれのグラム当たりのカロリー、毎日の食事における栄養素の配分、必要な運動量。

これだけなのである。

まずは始めること。始めたら結果(体重)を見ながら摂取カロリーと運動量を調整すること。

簡単である。

そう、理論上は。

何事も理論上はできるような気になるものである。

しかし、実践するとなるとどうしてもコツが要る。人間はどうしても楽に流れるからである。

そのコツも、私流のものであるが良ければ参考にしていただきたい。

コツその1:毎日体重を測り記録する。裸の自分の姿を毎日鏡で見る。

これは結構効果的だ。現実を見せつけられると言い訳のしようがなくなる。

コツその2:マクロ栄養管理法が許す限り、ご褒美を自分に与える。

ムチだけではなく、人間にはアメも必要だ。時には大好きなケーキやアイスクリームを食べよう。

コツその3:こんにゃくを食べる。

ほとんどカロリーのない食品の代表はこんにゃくだ。こんにゃくは食べ応えもあるしおいしい。こんにゃくレシピを増やしてみよう。個人的にはちくわとこんにゃく、鶏肉とこんにゃくのレシピがお気に入りだ。

コツその4:好きな運動種目を見つける。

こればかりは努力したからといって見つかるわけではないが、大切な要素だ。義務でやる運動ほどつらいものはない。好きだからこそ続くものだ。

私のおススメはランニングである。お金も道具も要らない。ただし大切な足と脚を守るランニングシューズだけはお金を惜しまずに選びたい(私のお気に入りは足袋シューズ!)。ランニングは陸地さえあればどこででもできるし、やろうと思えば通勤のついでにもできる。

実はランニングは単純に見えて難しい。初心者がいきなり走ると怪我をしかねない。もしあなたがランニングを始めたいのであれば、コーチ料を惜しまずにコーチに教わることをお勧めする。そのコーチ料があなたを取り返しのつかない怪我から守ってくれるかもしれないのだ。

コツその5:とことん眠る。

ほとんどの現代人は睡眠不足だ。一度とことん睡眠をとって、疲れのない状態を思い出してみることはあなたにとって有効であるに違いない。睡眠については膨大な研究が存在し、その主なものですらここで紹介することは困難である。

とことん睡眠をとろうと思ったなら、その際には禁酒をお勧めする。飲酒は睡眠の質を落とすからだ。

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